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3 代わりが見つからない

Penulis: あさじなぎ
last update Tanggal publikasi: 2026-08-01 21:25:05

 さくらちゃんが通う保育園は、うちの子と同じ保育園だった。

 東雲さんのマンション、うちから徒歩圏内だから当たり前といえば当たり前だけれど。

 正直驚く。

 見た記憶、なかったし。

「じゃあ、坂本さん、帰りは俊太君とさくらちゃんのお迎えってことになるんですかね……?」

 と、保育園の先生に言われ、私は首をかしげつつ、

「そう、ですね」

 と、あいまいに答えた。

 保育園を出て私は事務所に戻る。

 すると宮園さんが笑顔で私を出迎えくれた。

「ありがとう、坂本さん」

「いいえ、お子さんの送り迎えだけですし。あの、保育園がうちの子と一緒だったんですが、俊太と一緒のお迎えでいいですかね? それでさくらちゃん送り届けたらそのまま帰ったらまずいでしょうか……?」

 遠慮がちに尋ねると、宮園さんは笑顔で頷き言った。

「大丈夫よ! さくらちゃん送り届けたら連絡ちょうだい」

「わかりました」

 そう答えながら私は椅子に座り、本来の業務を始めた。

 東雲さんのお宅で働いている柏木さんは、昨日、仕事帰りに事故にあい、入院することになったそうだ。

 柏木さんのデータにそのことがすでに反映されていた。宮園さんが入力してくれたんだろうな。

 データをみると、柏木さんは四年近く東雲さんのお宅で家政婦をしているらしい。

 これじゃあいきなり違う人がきたら嫌よね。

 お母さん、いないみたいだったし。

 そう思い、部屋に飾られていた写真を思い出す。

 夫婦の写真はあったけれど、三人で撮った写真、なかったような……

 お昼を食べた後、夫の郁人からメッセージがくる。

『ジムいってくる』

 そう書かれたメッセージを見て内心ため息をついてしまう。

 いいな、休みの日があって。

 私は好きなこと、全然できないのに。

 月に二回、郁人が俊太を外に連れて遊びに行く日は家事やって終わってしまうし、食事は作らないとだし。

「はぁ……」

 ため息をついて、私はデスクの上を見る。

 唯一といっていい趣味は、ガチャガチャで「しろねこさん」グッズを集めることだ。

 しろねこさんは、SNSでイラストやショート動画を投稿している、丸いフォルムの白い猫のキャラクターだ。

 くろねこさんや、みけねこのしっぽの形をしたしっぽさん、という仲間がいる。

 デスクにはガチャガチャで集めたそのフィギュアが数体並んでいた。

 私、何してるんだろう。

 私は育児と家事と仕事があって、でも郁人は好きなことしてて。

 でも私の好きなことってなんだろう。

 それさえもわからなくなってしまった。

 そんな私に、宮園さんが声をかけてくる。

「ねえ、坂本さん、お願いがあるんだけれど」

 申し訳なさそうな声に、私ははっとして宮園さんのほうを見る。

「え、あ、はい、なんでしょうか」

「柏木さんの代わりが見つからなくて……それで、出勤日にさくらちゃんの送り迎え、しばらくお願いできるかしら? 家事の方は私でしばらくやらせて貰うんだけど……」

 そう、困った様子で言われて、断れるわけもなく。

「いいですけど……でも宮園さん、大丈夫なんですか? 事務所の仕事もあるのに」

 すると、宮園さんはため息をつき、

「そうなのよねぇ」

 と言う。

「柏木さん、週五回通っていたのよね。東雲さんのお宅はお母様がいらっしゃらないし、東雲さん自身も忙しい方で。以前はご両親のフォローもあったみたいなんだけど、ご高齢でねぇ」

「あー……それだとなかなか厳しいですね」

 週五回というと、代わりを見つけるのは難しいだろうな。

 いい人はすでにどこかでお仕事されてるだろうし。

 宮園さんは、頬に手を当ててため息交じりに言った。

「そうなのよね。急なことだし。それで東雲さんとも相談して、お子さんの保育園の送り迎えだけでも坂本さんにお願いしたいって。ただ長期間は厳しいからどうしようかと思って」

 それは大変だなぁ。

 私がします、と言えればいいけれど、週五回は少し厳しい。

 柏木さんがしていた業務内容は、掃除洗濯炊事。そしてお子さんの送り迎え。

 業務時間は朝八時から十六時半とけっこう長い。それはそうか。

 保育園て、八時半までに送らないとだし、その前に髪の毛セットして送っていくとなるとそれくらいになるか。

「送り迎えだけでいいんですか?」

「えぇ。朝早くなってしまうけれど、お願いできるかしら?」

 とても申し訳なさそうに言われて、しかも朝のさくらちゃんの様子も見てしまっているし、断れるわけもなくって。

 私は頷き答えた。

「わかりました」

 すると宮園さんはほっとした表情を見せる。

「金曜日は東雲さんが送り迎えされているから、月曜日から木曜日までお願いします」

「はい、わかりました」

 そう答えつつ、私はちょっと悩んでしまう。

 宮園さんだって仕事がある。

 私も仕事はあるけれど、子供の送り迎えがあるから、ついでではあるしそこまでの負担はない。

 私が家政婦は……ちょっと厳しいかな。

 元々料理はあまりできなくって、結婚前に二年ほど料理教室に通っていた。だから料理は自信、あるけれど。

 それ以外は……人並みだと思う。

 それを思うと、私がやります、とは言えなかった。

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